中堅・中小企業向けグループブランディング実践法|M&A・ホールディングス化を成功に導く事例3選
目次
記事監修:松井 寛志
ブランディングテクノロジー 株式会社
経営戦略室 クリエイティブディレクター
一般社団法人 ブランド・プランナー協会 代表理事
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2026年現在、事業承継や非連続な成長を目的としたM&Aが活発化する中、グループブランディングにおける課題はより複雑化しています。持株会社化や組織拡大のプロセスにおいて、買収先との文化統合(PMI)や共通のパーパスがない状態で進んでしまったり、グループ内で事業や人材が多様化し、一体感の醸成が難しいといった点です。本記事では、企業のグループ・ホールディングス化に伴う見直し点、ブランド体系の構造と機能を明確にし、M&Aによるグループ拡大も見据えた最新のグループブランディングの進め方とポイントを解説します。
このような方におすすめの記事です
- 今後グループ化やホールディングス化を検討している
- M&Aでグループインした企業とのシナジー創出・文化統合(PMI)に悩んでいる
- 多角的な事業運営を行っており、統一したメッセージやパーパスを伝える方法に悩んでいる
- 人的資本経営の観点から、グループ全体での従業員エンゲージメントを高めたい
グループブランドとは何か
コーポレートブランドの上位に当たるブランドのことを「グループブランド」と呼びます。ブランドは階層となっており、上位からグループブランド、コーポレートブランド、事業ブランド、そして最下層に商品・サービスブランドが位置します。
グループブランドの下位にあるコーポレートブランドは、企業の象徴となるブランドです。その下に位置する事業ブランドがグループブランドやコーポレートブランドの「らしさ」を体現する役割を担います。そして、事業ブランドを商品・サービスブランドが支えています。※このようなブランドの構造や紐づけのことを「ブランド体系」と呼びます
図からもわかる通り、グループブランドは複数のコーポレートや事業を包括しており、そのブランドの影響は広範囲になります。 とくにM&Aで既存の強いブランド(買収先)がグループに入る際などは、各ブランドの役割や独立性を慎重に整理することが大切です。その上でグループ全体のブランドを考えます。
整理をする際には縦と横の視点が必要です。縦軸では役割を明確にし、それぞれに矛盾がないかを確認します。横軸では各コーポレートの紐づきやシナジーの可能性を考えます。社会のニーズに対応したブランドをしっかりと棲み分けさせることで、ブランドの相乗効果が生まれます。
それぞれのコーポレートブランドが明確化された上で、グループが社会や顧客、スタッフなどのステークホルダーとどのような関係を構築するかを考えると良いでしょう。 ブランディングに成功しているグループでは、グループ全体の指針になるような求心力があるブランドを構築し、多様な人材をまとめるためのブランドメッセージやミッション、ビジョン、パーパス(存在意義)として言語化し、発信することが多くなっています。
グループブランディングは何故難しいのか
先ほどの図の通り、グループブランドには複数のブランドが下位に存在しており、これらを統括していく必要があります。そのため、一つのコンセプトを定めて浸透させていくことが困難です。展開している事業が多角的であったり、出自の異なる企業が集まるほど共通項が見えづらく、コンセプトにフォーカスができません。
また、ブランディングの現場では、グループ規模が大きくなるほど抽象化され、実態がわからなくなることがよく発生してしまいます。
さらに、営業活動などの集客や採用などの統一した機能を持っていない場合や、M&A後の組織文化の融和(カルチャーフィット)が後回しにされた場合にも、グループブランドの目的が不明確になりやすいです。美辞麗句が並び、形式上作られただけのグループサイトを見かけることも少なくありません。
グループブランディングの課題例
- 事業が多角化しブランドの統制が取れていない
- M&Aによる組織拡大で、企業文化の衝突や従業員のエンゲージメント低下が起きている
- グループはあるがコーポレートや事業との接続が弱い
- グループの存在意義(パーパス)を示せていない など
グループブランディングの進め方
この章では、最新の潮流やM&Aを考慮した具体的なグループブランディングの実践方法についてご説明します。
グループブランドとして目指したい姿を確認する
グループブランドとして最初に目指したい状態は以下の通りです。
- グループ間のシナジー(協力関係・相乗効果)などが明確になっている
- ステークホルダー、特に社会との関係性がパーパスとして明確に示されている
- ミッションやビジョンなど中核になる思想が言語化されている
- 人的資本経営の観点から、多様な人材が活躍できるグループ共通の理念が浸透し、スタッフからの共感が生まれている
グループ内の各ブランドの役割を明確にし、そのブランドを適切な市場に投入することで、最大のシナジーを生むことができます。 また、グループ化を機にどのような社会課題に対し、グループ一丸となり取り組んでいるかを具体的に示すことも有効です。事業活動を通じた地域や市場課題の解決、SDGsへの取り組み、サステナビリティへの配慮などが具体的な活動を示せると良いでしょう。
言語化された思想により、ステークホルダーへの発信が統一されます。グループ全体のブランドが明確になることで、インナーブランディングがスタッフにも浸透していきます。特に出自の異なる買収先企業のスタッフが統一されたブランドに共感して対応することで、一層グループの強い信頼へと繋がります。
ブランド体系を整理する
前述の通り、ブランド体系を整理することが最優先です。グループブランドの構造を理解するために、各ブランドの紐づきを整理します。もし今後、M&Aなどでグループを拡大していく方針があれば、「買収先のブランドをグループ名に統合するのか」「独立ブランドとして維持するのか」といった統合ルールを事前に明確にしておきましょう。
グループの持つ機能を整理する
次にグループとして必要な機能を整理します。グループ共通採用やIR、多様な人材を統括する管理体制、各コーポレート単位ではできていないSDGsや社会貢献活動の推進など、実態を明確にしましょう。
各ブランドを明確にしグループとしてのブランドを固める
各コーポレートが持つ事業、商品、サービスの「らしさ」が何なのかを整理し、それぞれのブランドの関係性を把握します。 初めての企業ブランディング【入門編】経営効果と解決できる課題など基本概念を解説でブランドの定義やブランディングがもたらす効果を確認してから進めてください。
グループとしてのブランドを固めるために、ミッション、ビジョン、そして社会的な存在意義であるパーパスを言語化しましょう。ステークホルダーへのステートメントとして、ブランドメッセージも定めましょう。 ブランドメッセージについては、事例から学ぶ!中小企業にこそ「ブランドメッセージ」が必要な理由~9つのチェックポイント付き~で良し悪しを見分けるポイント9つを紹介していますので、そちらも参考にしてください。
各接点へのブランド反映を進める
ブランド体系とグループの持つ機能が整理された状態で、ステークホルダーとの接点へブランドの反映を進めます。 グループサイトや紹介資料、説明動画の制作をし、ステークホルダーへの発信の基盤を作りましょう。
グループとコーポレート間の接続を強化する
グループブランドが明確になっただけでは、各コーポレートは実利を感じづらく、そのブランドを維持することは難しくなります。グループブランドをただのお題目にせず、各コーポレートの事業活動と接続することで、おのずと帰属意識やエンゲージメントも高まっていきます。
例えば営業や採用のシーンでは、グループ全体の実績や、各コーポレート単位では行えていない社会貢献活動など社会との関係性を示すことで、ブランドの信頼を得やすくなります。 一方で、各コーポレートの事業活動内容をグループ全体から発信することも大切です。コーポレートを横断したPR活動やグループ内での事業活動の共有によって、出自の異なる企業間でも一体感が生まれます。そのための社内報や情報共有の仕組みを整えることも、M&A後の離職を防ぐ重要なPMI施策となります。
ステークホルダーとのリレーションを強化する
明確となったブランドを、次はステークホルダーへ浸透させるための施策を行っていきます。ブランドの浸透のためには、継続した社内への浸透活動(インナーブランディング)と社外へのプロモーション(アウターブランディング)が必要です。
はじめにステークホルダーごとにブランド接点を明確にしましょう。グループブランドの発信対象は誰なのか、目的は何なのか、どのような接点で伝えるのかを考えます。 タッチポイントの例として、提供する商品そのもののほか、公式メディアなどのプロモーション、パンフレット・カタログ類などの配布物、集客をする店舗・ショールームなども挙げられます。人も大切な接点となるため、グループ全体の営業マンや店員からの接点についても考えます。近年ではSNSも重要なブランド接点となっています。
ブランド接点が明確となった状態で、各コーポレートでの事業活動の発信や、グループとして推進しているプロジェクトを定期的に社外へ発信していきましょう。継続的なブランド発信活動により、実働を伝えて行くことで言行一致を示しましょう。それがグループへの信頼へと繋がります。
ブランドを継続していくには、グループとしてのミッションやビジョンが活動の大切な指針となります。しかし形式上定められた言葉では実働がともなわず、結果としてステークホルダーもグループの実態をつかめなくなってしまいます。インナーブランディングで指針を社内へ浸透させる継続的な活動が重要となります。
グループブランディング事例
当社がご支援させて頂いたグループブランディングの事例を紹介します。主に、グループとしてのミッションやビジョンの策定、グループサイトの構築、各コーポレートのメッセージ開発を起点としたグループとの接続・統合強化をご支援しています。
広川グループ様
広川グループ様は、広島市を中心に食品や石油エネルギー、住設エネルギーのほか、旅行事業や保険事業など幅広い事業を展開する8社のグループ会社です。
グループ紹介動画
実施内容
多角的な事業を展開するグループ会社としての信頼性や採用力の向上を目的にブランディングを開始。グループとしての強みや各社のシナジーを明確化し、グループサイトからの発信を行いました。また、グループサイトでは採用における強みや魅力も示し、人的資本の強化に繋がる採用ブランドの強化も行っています。グループサイトはこちら
グループブランドのコアになる言語を開発
各コーポレートの役割と関連性を明確にしグループの指針を示した
グループ構築とブランドムービー作成
グループとしての採用ブランディング
ブランドマネジメントや浸透における方針を定めた
グッドグループ様
グッドグループ様は、不動産の買取、販売、仲介を行う「グッドリアルティ株式会社」、チケット・ブランド品買取販売を行う「グッドリユース株式会社」、リフォームを行う「グッドビズ株式会社」3社のグループ会社です。グループサイトはこちら
実施内容
グループ全体のブランド体系を改めて明確化し、社会、ステークホルダーへのメッセージ訴求を行いました。また、各コーポレートのタグラインを開発し、事業領域やグループとの繋がり・シナジーを言語化しました。各社の言語開発の後、コーポレート(事業)サイトのリニューアルを行い事業活動との接続強化を行いました。メディアの発信を見直したリユース事業、リアルティ事業では施策後に業績が3.5倍に。※2022年6月の昨対比
不二ホールディングス様
不二ホールディングス様は、公共下⽔道処理施設保守や総合ビル管理を行う「株式会社不二テクノ」、民間企業向け環境プラント保守や総合ビル管理を行う「株式会社ライズ」、グループホームや介護付き有料老人ホーム運営を行う「株式会社スマイル」3社のホールディングスです。グループサイトはこちら
実施内容
ホールディングス化の体制構築を進めるにあたり、全体を包括するミッションやビジョンの策定、各社のロゴや名刺、封筒などの制作を行いました。また、ホールディングスサイトにはブランドメッセージを起点にロゴの由来や各言語の説明、各コーポレートへの導線を設置し、シナジーを生む発信の基盤を構築しました。
最後に・グループブランディングの実践に向けて
グループブランディングを戦略的に実施していくことで、グループ内のリソース配分が最適化され各ブランドにシナジーが生まれます。特にM&Aによる拡大期においては、買収先を含めた従業員のエンゲージメントを高めるPMI(買収後の統合)の要として機能します。 グループ・ホールディングス化は、企業グループのパーパスと社会性を再定義し、社内外に訴求する絶好のタイミングです。ステークホルダーと理想の関係を構築し、中長期的な企業価値を向上させるゴールに向け、本記事をぜひお役立てください。
ブランディング担当者のための個別相談会《毎月開催》
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- ブランディングをどう進めたら良いか相談したい
- 課題に対し一緒にアクションプランを考えて欲しい
- プロジェクトの要件整理を手伝って欲しい
- ブランディングを行う業者ごとの特徴や相場などの実態を知りたい
- ブランド戦略の壁打ちをしたい など






