今こそ本気になれるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定の手法・ステップ徹底解説《2025年版》

目次
- MVV策定の前に考えておくべき視点
- 1. 既存の理念体系を整理する
- 2. そもそもMVVを策定する必要はあるのか
- 3. 強力なリーダーシップはあるか
- 機能するミッションについて
- 言葉の背景に注視して策定する
- 機能するビジョンについて
- 言葉の背景に注視して策定する
- 機能するバリューについて
- 言葉の背景に注視して策定する
- 策定プロセスが重要
- リーダーのオーナーシップを起点にする
- 目的や背景を明確にする
- 一次情報を取得する
- 集約・凝縮・選択する
- 言葉を磨き込む
- 機能するMVVの好例
- Goodpatchのミッション
- サイバーエージェントのビジョン
- メルカリのバリュー
- 最後に、私たちのミッションについて
- 本記事の監修者
- MVV策定に向けた相談会を開催中 《毎月3社まで》

記事監修:松井 寛志
ブランディングテクノロジー 株式会社
経営戦略室 クリエイティブディレクター
一般社団法人 ブランド・プランナー協会 代表理事
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近年、多くの企業でMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定する動きが活発になっています。会社の目指す方向を示し、社員の行動を促すための大切な指針ですが、「作ったはいいけれど、いまいち浸透していない…」「本当にこれでいいのだろうか…」と感じている方も少なくないのではないでしょうか。
せっかく策定するなら、社員一人ひとりが「本気」になれて、会社の成長を力強く後押しする「機能する」MVVを作りたいですよね。
2025年という節目を前に、改めてMVV策定の本質に立ち返り、自社にとって本当に価値のあるMVVとは何かを一緒に考えていきましょう。
このような方におすすめの記事です
- これからMVVを策定しようと考えている企業の担当者・責任者の方
- 既存のMVVを見直したい、もっと機能させたいと考えている方
- MVVがなかなか社内に浸透しないとお悩みの方
- 言葉の力で、会社をもっと強くしたいと考えている方
- ブランディングを通じて、会社の成長を加速させたい方
- 社員のエンゲージメントを高め、一体感のある組織を作りたい方
MVV策定の前に考えておくべき視点
やみくもに策定を始める前に、いくつか大切な視点を確認しておきましょう。これらを事前に整理することで、より効果的なMVV策定につながります。

1.既存の理念体系を整理する
まず、自社に既に存在する経営理念や社是、行動指針などを洗い出してみましょう。その中に、似たような言葉や重複する内容はありませんか?
整理のポイント | これからのブランディング |
---|---|
重複・類似言語はない | 言葉が多いと、社員はどれを大切にすれば良いか混乱し、結果としてどれも浸透しにくくなります。 |
それぞれの言葉の役割は明確か | それぞれの言葉が持つ意味や役割が曖昧だと、理解が進まず行動にもつながりません。 |
時代に合っているか | 会社の状況や社会環境の変化に合わせて、理念体系も見直す必要があります。 |
もし、言葉が多すぎたり、分かりにくかったりする場合は、この機会に整理・統合することを検討しましょう。
2.そもそもMVVを策定する必要はあるのか
「策定する企業が増えているから―」という理由だけでMVVを策定するのは危険です。本当に自社にとってMVVが必要なのか、改めて考えてみましょう。
- ミッション(M)とビジョン(V)だけで十分なケース: 会社の存在意義と目指す未来像が明確であれば、必ずしもバリュー(V)まで必要ない場合もあります。
- 既存の理念にバリュー(V)だけ追加するケース: 既に素晴らしい理念がある場合、それを活かしつつ、行動指針となるバリューを追加するだけで良いかもしれません。
大切なのは、「どう在りたいか(ミッション)、どうなりたいか(ビジョン)、何を大切にしたいか(バリュー)」を表現できる言葉があるかどうかです。形式にこだわるのではなく、自社にとって最適な形を見つけましょう。
3.強力なリーダーシップはあるか
MVV策定において、経営者やブランドオーナーの強い想いやリーダーシップは不可欠です。
- 言葉への信念: MVVは、単なる綺麗な言葉の羅列ではありません。経営者が本気で信じ、その実現に向けて強い意志を持っていることが大前提です。
- 主体性の源泉: 参加者全員の意見を平等に集めて作った、当たり障りのない言葉は、誰の心にも響かず、誰も主体性を発揮しなくなってしまいます。
- 体現する姿勢: 理想は、経営者やコアメンバーが、策定したMVVを誰よりも深く理解し、日々の言動で自然と体現している状態です。その熱量が、ステークホルダー全体へと伝わっていきます。
MVV策定は、トップやコアメンバーが「本気」で取り組むべきプロジェクトなのです。ここが抜け落ちてしまうと策定後に形骸化してしまったり、一貫性のある発信活動が続かなくなってしまうことも多いです。
機能するミッションについて
ミッションは、会社の「存在意義」や「使命」を示すものです。社員が「なぜこの仕事をしているのか」という問いに対する答えであり、共感や主体性を生み出す源泉となります。

言葉の背景に注視して策定する
機能するミッションには、必ずその背景に強い想いやストーリーがあります。
- 実体験から生まれた使命感: 創業者や経営者が過去に経験したこと、そこで感じた課題意識や「これを解決したい」という強い想いと紐づいているか。
- 社会や業界に対する課題意識: 自分たちの事業が、社会や業界のどのような課題を解決しようとしているのか、その視点が高いか。
- 「何故やるか(Why)」との繋がり: Simon Sinek氏が提唱する「ゴールデンサークル」のように、「What(何を)」や「How(どうやって)」だけでなく、「Why(なぜ)」が明確になっているか。
- 自分たちの存在意義: 「社会にとって、私たちがいなければ何が失われるのか」という問いに答えられるか。
これらの背景を深く掘り下げることで、ミッションに熱量や具体性が生まれ、聞く人の心を動かし、共感や主体性を引き出すことができるのです。
機能するビジョンについて
ビジョンは、会社が目指す「未来の姿」や「理想の状態」を示すものです。社員にワクワク感を与え、未来への活力を生み出す羅針盤となります。

言葉の背景に注視して策定する
機能するビジョンもまた、策定する人たちの本心から生まれるものです。
- 本心から成し遂げたいこと: 誰かに言われたからではなく、心の底から「これを実現したい!」と思えることと紐づいているか。
- 想像するだけでワクワクするか: そのビジョンを思い描いた時に、心が躍ったり、エネルギーが湧いてきたりするか。
- 実現した時の情景を想像できるか: 抽象的な言葉だけでなく、ビジョンが実現した世界の様子が目に浮かぶような、具体的なイメージが持てるか。
- 実現可能性: 決して簡単な道のりではないけれど、成長や変化を続けることで「手が届くかもしれない」と思える、挑戦心を掻き立てるものであるか。
明確なゴールイメージを示すことで、社員の意識や行動が変わり、目標達成に向けた活力や推進力が生まれます。
機能するバリューについて
バリューは、ミッションやビジョンを実現するために、社員が大切にすべき「価値観」や「行動指針」です。日々の判断や行動の基準となり、組織の文化を形作ります。

言葉の背景に注視して策定する
機能するバリューは、その会社ならではの「らしさ」と深く結びついています。
- 思考や行動のクセや拘り: 創業以来、大切にしてきた考え方や、仕事を進める上での「譲れないポイント」など、その会社ならではのDNAと紐づいているか。
- 優位性や違いを生み出す要素: 他社にはない、自分たちの強みや競争力の源泉となっているものは何か。
- カルチャーとの繋がり: 目指したい組織文化や、社員に持ってほしいマインドセットと一致しているか。
- 常に意識できる(したいと思う)内容: 日々の業務の中で、ふとした瞬間に思い出せる、あるいは「こうありたい」と思える、シンプルで分かりやすい言葉になっているか。
- 厳選する: あれもこれもと盛り込むのではなく、本当に大切にしたい価値観を3〜5つ程度に厳選することで、浸透しやすくなります。
バリューを明確にすることで、社員一人ひとりの思考や行動が一致し、組織としての一体感と強度が生まれます。
策定プロセスが重要
どのようなMVVを作るかはもちろん重要ですが、「どのように作るか」というプロセスもまた、その後の浸透や機能に大きく影響します。

1.リーダーのオーナーシップを起点にする
前述の通り、経営者やリーダーが「なぜMVVを策定するのか」「どのような組織を目指したいのか」という強い意志と情熱を持つことが全てのスタートラインです。
2.目的や背景を明確にする
「なぜ今、MVVが必要なのか」「MVVを通じて何を実現したいのか」といった目的や背景を、関係者全員で共有し、共通認識を持つことが大切です。
3.一次情報を取得する
MVV策定のヒントは、社内に眠っています。様々な方法で、社員の声や想いを集めましょう。
- 全体アンケート: 全社員を対象に、会社の強み・弱み、目指したい姿、大切にしたい価値観などを広く聞きます。
- コアメンバーへの1on1インタビュー: 経営層や各部署のキーパーソンに、より深く会社の現状や未来についてヒアリングします。
- メンバー間でのワークショップやディスカッション: 異なる部署や立場のメンバーが集まり、会社の未来について自由に意見を交わす場を設けます。
4.集約・凝縮・選択する
集まった多くの意見やアイデアを整理し、MVVの核となる要素を見つけ出します。
- 全体傾向は参考: アンケート結果などの全体傾向はあくまで参考とし、多数決で決めることは避けます。
- 問いに向き合う: 「どう在りたいか、どうなりたいか、何を大切にしたいか」という本質的な問いに、真摯に向き合います。
- 意思を込めて選択: 最終的には、経営者とコアメンバーが、会社の未来に対する責任と覚悟を持って、意思を込めて言葉を選択します。
5.言葉を磨き込む
MVVの骨子(What to Say)が決まったら、それをどのように表現するか(How to Say)を練り上げます。
- 伝わるか: 誰にでも分かりやすく、誤解なく伝わるか。
- 感情が動くか: 心に響き、共感を呼ぶ言葉になっているか。
- 意識しやすいか: 覚えやすく、口に出しやすい言葉になっているか
コピーライターや専門家の力を借りることも有効です。何度も推敲を重ね、魂のこもった言葉に磨き上げましょう。
機能するMVVの好例
実際に、多くの企業が素晴らしいMVVを掲げ、成長の原動力としています。ここでは、特に「機能している」と感じられるいくつかの事例をご紹介します。何故、これらのMVVが社員を動かし、会社を強くしているのか、その背景にも注目してみましょう。
Goodpatchのミッション

画像引用:Goodpatch公式サイト(https://goodpatch.com/)
- 「デザインの力を証明する」
Goodpatchのミッションは、「デザイン」という自社の核となる事業領域と、「証明する」という強い意志表示を組み合わせた、非常にシンプルかつ力強い言葉です。ここには、単にデザインを提供するだけでなく、そのビジネスや社会における真の価値を世に示していくという、同社の存在意義と挑戦的な姿勢が明確に込められています。無形であり、価値が伝わりにくい「デザイン」に対し、具体的な成果をもってその力を示していくという、明確な行動指針ともなっています。
このミッションには創業者の強い原体験と、創業以来一貫してこのミッションを追求してきた「ストーリー」にあります。デザインの価値が正当に評価されない悔しさから生まれたこの言葉は、社員にとって単なるスローガンではなく、自分たちの仕事の意義そのものです。クライアントワーク、自社プロダクト開発、メディア運営(Goodpatch Blog)といった全ての事業活動が「デザインの力を証明する」という一点に集約されておりとても機能している印象です。
関連リンク:Goodpatch公式サイト なぜデザインに向き合うのか
https://goodpatch.com/design
サイバーエージェントのビジョン

画像引用:サイバーエージェント公式サイト(https://www.cyberagent.co.jp/corporate/vision/)
- 「21世紀を代表する会社を創る」
サイバーエージェントのビジョンは、非常にスケールが大きく、野心的です。具体的すぎる目標ではなく、「21世紀を代表する」という抽象的でありながらもインパクトの強い言葉を選ぶことで、時代や事業の変化に対応できる柔軟性を持ちつつ、常に高みを目指すという企業のDNAを表現しています。社員にとっては、果てしない挑戦への意欲を掻き立てられる、夢のある目標設定と言えます。
この壮大なビジョンが機能している背景には、それを本気で目指す経営トップの強いリーダーシップと、一貫したメッセージ発信があります。「AbemaTV」のような大きな投資や、若手を大胆に抜擢する人事制度、数々の新規事業への挑戦は、まさにこのビジョンを実現するための具体的なアクションです。スタッフは、会社が本気でビジョンを追い求めていることを日々の業務や制度から実感できるため、「自分も貢献したい」という強いエンゲージメントが生まれやすい点があります。
関連リンク:サイバーエージェント公式サイト ビジョンページ
https://www.cyberagent.co.jp/corporate/vision/
メルカリのバリュー

画像引用:メルカリ公式サイト(https://about.mercari.com/about/about-us/)
- 「Go Bold / All for One / Be a Pro / Move Fast」
メルカリのバリューは、4つのシンプルかつキャッチーな英語表現で構成されており、覚えやすく、口に出しやすいのが特徴です。「大胆にやろう」「全ては成功のために」「プロフェッショナルであれ」「はやく動く」というそれぞれの言葉は、メルカリが求める具体的な行動や思考様式を明確に示しています。特に「Move Fast」は、変化の速い市場環境で勝ち抜くためのスピード感を重視する、メルカリらしい価値観を象徴しています。
その価値観をうまく発信しているのが、自社メディア「mercan」です。これにより採用段階から価値観に共感したメンバーが集まり、カルチャーや制度の後押しから早期にパフォーマンス発揮しやすい環境になっています。
関連リンク:メルカリの「人」を伝える mercan
https://careers.mercari.com/mercan/
これらの事例からわかるように、機能するMVVは、具体的で、共感を呼び、行動を促し、そして何よりもトップとメンバーが本気で信じているものです。自社のMVVを策定・見直しする際には、これらの点をぜひ参考にしてみてください。
最後に、私たちのミッションについて

私たちブランディングテクノロジーも、「ブランドを軸に中堅・中小企業様のデジタルシフトを担う」というミッションを掲げています。
この言葉は、私たちにとって単なるスローガンではありません。上場前後の変化、コロナ禍という未曾有の事態、急速に進むDX化、そしてAIの進化といった、激しい外部環境の変化の中でも、私たちが「何のために存在するのか」「どこへ向かうべきなのか」という選択の軸となり、進むべき道を示してくれました。
迷った時にはこの言葉に立ち返り、自分たちの使命を再確認することで、グループ全体に一体感が生まれ、思考や行動を一致させることができたと実感しています。これこそが、「機能するMVV」の力だと考えています。
MVV策定は、もはや特別なことではありません。しかし、多くの企業が取り組むからこそ、その「質」が問われています。ただ綺麗な言葉を並べるのではなく、経営者やコアメンバーの強い想いを乗せ、社員一人ひとりの心に火を灯し、行動を変える。そんな「本気のMVV」「機能するMVV」を策定することができれば、それは会社の未来を切り拓く、何より強力な武器となるはずです。
本記事の監修者

松井 寛志
ブランディングテクノロジー 株式会社
経営戦略室 クリエイティブディレクター
一般社団法人 ブランド・プランナー協会 代表理事
2007年にブランディングテクノロジーに入社。制作部門でデザイナーとして年間100社以上の中小企業様の集客支援を行う。2011年~2013年にかけスマートフォン向けのWebサービスの立上げや、中小企業様向けのブランディングサービスの立上げを経験。
2015年には企業ブランディングの資格認定を行う一般社団法人の設立に関わり、現在は代表理事として運営を行っている。2018年にはそれらの経験を活かし、自社の社名変更及びリブランディングにおけるCI構築を担当。2019年からは社内外のブランド浸透に関わり、ブランドを起点に日々発信活動を行っている。

担当者さま向け相談会を開催中《毎月3社まで》

このような事をご相談いただけます
- MVV策定をどう進めたら良いか相談したい
- 現在のMVVや理念体系に課題を感じており対策を打ちたい
- 策定したMVVがスタッフに浸透していない
- ブランディングを行う業者ごとの特徴や相場などの実態を知りたい
- ブランド戦略の壁打ちをしたい など